過疎化が進む高校ラグビー。部員数は10年で−5,000人
世界のラグビー人口は発展途上国を中心に増加し、2018年の競技人口は約960万人と過去最多を更新した。(詳細は世界各国ラグビー競技人口)
経済の発展に伴いスポーツをする時間と経済的な余裕が増え、さらに7人制ラグビーがオリンピックの正式競技になったこと等も後押しし、今後もさらに普及しそうだ。
2019年にはアジアで初のワールドカップが日本で開催される。
アジアは世界の約6割もの人口を有する地域だがラグビーが盛んな地域は少なく、W杯を契機にアジアでのラグビーの普及にも期待が高まる。
一方、日本では高校のラグビー部において単独でチームを作れず、同じ地域の高校と合同でチームを結成する話や、高校入学時にラグビー部を選択する生徒が減っているという話を多く聞くようになった。
そこで、ここでは高体連の資料から、高校ラグビーの部員数とその変遷を調べてみた。
高校ラグビー部の高校数と部員数
年 | 校数(前年比) | 部員数(前年比) | 備考 |
2003 | 1,252 | 30,419 | W杯豪大会 |
2004 | 1,246(-6) | 30,241(-178) | |
2005 | 1,241(-5) | 29,773(-468) | |
2006 | 1,210(-31) | 28,630(-1,143) | |
2007 | 1,183(-27) | 27,250(-1,380) | W杯仏大会 |
2008 | 1,165(-18) | 27,340(+90) | |
2009 | 1,149(-34) | 26,570(-770) | |
2010 | 1,132(-17) | 25,379(-1,191) | |
2011 | 1,109(-23) | 24,982(-397) | W杯NZ大会 |
2012 | 1,108(-1) | 24,990(+8) | |
2013 | 1,089(-19) | 23,972(-1,018) | |
2014 | 1,075(-14) | 23,827(-100) | |
2015 | 1,051(-24) | 23,146(-726) | W杯南ア大会 |
2016 | 1,034(-17) | 23,602(+456) | |
2017 | 1,026(-8) | 22,434(-1,168) | |
2018 | 1,000(-26) | 21,702(-732) |
高体連の資料でデータを確認できるのは2003年以降。
そこで、2003年から2018年の15年間のデータを引っ張ってきた。
2003年 1,252校、30,419人
↓
2018年 1,020校、21,702人
15年間でラグビー部のある高校は232校、部員数は8,717人減っている。
2015年W杯で日本代表が南アに勝利したことにより一時的なブームが巻き起こり、その翌年の2016年に部員数は456人増加した。
代表チームの活躍が選手増に結びついたが、その勢いは続かず2017年、18年は大幅減、ここ15年間はほぼ右肩下がりの状況が続いている。
ラグビー部のある高校は全ての年において前年比でマイナスに。
日本は少子高齢化が進み、子供の人数自体が減っていることから「しょうがない」と思うかもしれない。
そこで次にラグビー部と他競技の部員数を比較してみた。
ラグビー部と他競技の部員数比較(高校男子)
競技 | 2003年 | 2018年(2003年比) |
サッカー | 149,591 | 165,351(+15,760) |
バスケ | 95,459 | 91,454(-4,005) |
バレー | 48,314 | 46,223(-2,091) |
ハンドボール | 22,888 | 27,131(+4,243) |
水球 | 1,008 | 1,362(+354) |
ラグビー | 30,419 | 21,702(-8,717) |
高校の団体スポーツ(男子)の部員数はこの通り。
高体連の資料に野球は含まれていないため、野球部の人数は記載していないが別資料によると約16万人ほどとのこと。
少子高齢化に伴い高校生の人口は減少しているが、2003年→2018年の人数を見ると、驚くことにサッカー、ハンド、水球の部員は増加している。
バスケとバレーは微減、ラグビー部のみ大きく減少した。
2003年にはハンドボール部22,888人、ラグビー部30,419人とラグビー部員の方が多かったが、2018年にはハンドボール部27,131人、ラグビー部21,702人と完全に追い抜かれている。
高校の体育会系の部活動といえばかつては猛練習&精神論が蔓延っていたが、最近は楽しさを追い求めることも重視。
入部した後に辞める生徒も減っている傾向にあるという。
ラグビー部が一人負けしている理由と将来
ラグビーだけが「一人負け」している理由としては、競技の特性(きつい、怪我が多い等)、人気の低迷、代表チームが弱かったことや、舵取りをするラグビー協会の力不足などにあるだろう。
部員数が減ってラグビーができる受け皿が減少(廃部)し、さらに新たにラグビーをする人が少なくなるという負のスパイラルに陥っている。
花園への予選では参加校がわずか2校という県や、何十年も連続で出場している高校もあり、多くの都道府県において花園出場校は固定化している。
さらにベスト4に入るチームもほぼ毎年同じ顔触れだ。
このままでは2019年W杯後に一時的に盛り返す可能性はあるものの、競技人口の右肩下りの状況に歯止めがかかることはないだろう。
この状況を変えるには、15人制&7人制代表、スーパーラグビー、トップリーグ、大学、高校と各カテゴリーにおいて、それぞれが強化を図ると同時に、人気・観客動員を向上させる努力と施策が必要。
さらに、小中高などの学校や地域でのラグビーの普及活動にも力を入れなければならない。
その指揮を執るのはラグビー協会となるが、その協会が改革に及び腰で、無為無策なのが残念だ。
まずは協会のガバナンスを改革し、リーダーシップとやる気・能力のある人に日本ラグビーを牽引してもらいたいものの、全く期待できないのがなんとも歯がゆい。
現在、日本ラグビーは自国開催のW杯に全てのベクトルが向かっている状況。
W杯も大事だが、それよりも重要なことはW杯以後もラグビーが持続的に発展し、魅力のある注目されるスポーツになること。
10年後、30年後、50年後も日本代表やスーパーラグビー、大学、高校ラグビーに注目し一喜一憂したいが、果たしてどうなることやら?