【書評】ラグビーをひもとく〜反則でも笛を吹かない理由〜

ラグビー本

ラグビーをひもとく〜反則でも笛を吹かない理由〜

書籍名 ラグビーをひもとく 
著者 李スンイル 
発売日 2016年7月15日 
出版社 集英社 
ページ数 253ページ 
値段 760円(税抜) 

ラグビーの誕生から成り立ち、ルールの変遷、レフリーの役割、スクラム、ラック、モール、ラインアウトの定義とオフサイドなどをワールドラグビー競技規則を引用しながらレフリーの視点から解説した本。

著者の李スンイル氏はラグビー選手、レフリー、コーチを長年務めている方で「ラグビーのルールは難しい。その理由には背景があり、その背景をひもとく」と語る通り、ラグビーの文化や歴史を紹介しながらルールのポイントを説明している。

基本的に選手の位置取りや動きなどが図ではなく文字で説明されているため、頭の中でそのプレーの状況を思い浮かべながら読み進める必要がある。ラグビー経験者やラグビーが好きな中級者向けで、基本的なルールしか分からない場合は理解するのが難しいかもしれない。

ラグビーのレフリーを目指す選手や、ラグビーを始めたばかりの高校生、ラグビーのうんちくを語りたい人にはオススメ。ここでは特に印象に残った箇所をご紹介したい。

ラグビーをひもとく

レフリーは相手側から利益を奪ったかどうかを判断する

重要なのは「現象」ではなく、その後の「影響」であり、その判断をレフリーに委ねることになる。そこがまさに、反則を見つけて笛を吹く審判ではなく、ゲームの進行をスムーズに進めるために判断を委ねられたレフリーのレフリーたるところと言えよう。

ストライクかボールかの二者択一をする野球などの審判と、入り乱れた両チームを仲裁して取り持ち、試合をスムーズに進行させるラグビーのレフリーはその役割が異なる。

例えばノックオンしたボールをオフサイドの位置にいた味方の選手が拾ったとしても、その周辺に相手の選手がいなければ「相手側から利益を奪った」とは言えず、この場合はペナルティ(ノックオンオフサイド)ではなくノックオンとして相手ボールのスクラムで再開される。

なんとなく、分かっていたことでも、文としてこのように説明されると理解力が深まる。「相手から利益を奪ったか否か」ラグビーのレフリーはこのようなことを一瞬で判断し、ゲームを進めなければいけないから大変だ。

スローフォワードは正当に投げたボールの結果は問わない

ボールを後方に投げた後、慣性の法則で前方へ飛んだボールはスローフォワードになるのか否か。世界の常識では「否」である。

最近、トップリーグや海外テストマッチを観ていて思うのが、フラットなパスや「スローファーでは?」と思うことが多くなってきた。カメラのアングルなどで実際とは見え方が異なるものの、スローフォワードっぽいパスからトライが生まれてもTMOでの確認にすらならないこともあった。

極端な例だが、プレーヤーがボールを真横に投げて、その後風などの影響により結果的にボールが前方に飛んでもスローフォワードにはならない。現在のルールではパスしたプレーヤーの両腕が相手側のデッドボールラインの方向へ動いているかどうかが判定の際に重要になるという。

「ラグビーをひもとく」ではこのように、観戦者が試合を観ていてあれ?と思うところにフォーカスして説明されている。

他にも第3章で説明されている「ラインアウトモール」では、どのようなケースでディフェンス側のコラプシング(モールを故意に崩すこと)やアタック側のオブストラクション(ボールを持っていない相手選手のディフェンスを妨害する)、アクシデンタルオフサイド(アタック側が味方同士でぶつかること)になるのか詳しく説明されている。

日本代表も11月のテストマッチで自陣5m付近からの相手ボールラインアウトで、モールを作らず相手の反則を狙ったものの、レフリーとの見解の相違?でトライを奪われたシーンがあったが、あの時に観る側からするとこの事が分かっていれば?とならずにより試合を楽しめたはずだ。

「ラグビーをひもとく」目次

内容は以下の目次の通りとなっているが、特にスクラム、ラック、モール、ラインアウト周りのオフサイドには詳しい説明がされており、これらの知識を深めたい方、選手にはオススメの一冊だ。

(序章)フットボールとレフリーをひもとく
1章 オフサイドをひもとく
2章 スクラムをひもとく
3章 ラック、モールをひもとく
4章 タックルをひもとく
5章 ラインアウトをひもとく
(終章) ラグビー憲章をひもとく

【書評】ハードワーク〜勝つためのマインド・セッティング〜

2016.12.29