なぜアイルランドは最後にボールを蹴り出した?
9月28日に行われたラグビーW杯「日本vsアイルランド戦」で日本は見事勝利、日本から世界にビックニュースを発信した。
この試合で話題になっているのが、「なぜアイルランドは最後にトライを取りに行かず、ボールを蹴り出し試合を終わらせたのか?」ということ。
その答えは「勝点1点を取るため」ということになるが、その理由と背景を詳しくまとめてみた。
ラグビーの前半・後半が終わるタイミングについて
まずはラグビーにおける前半と後半がそれぞれ終わるタイミングをざっくり理解しよう。
サッカーの場合は主審のホイッスルが鳴ると、プレー中であってもその時点で終了となる。
しかし、ラグビーは40分ピッタリで会場にホーンが鳴る。
そして、その後もプレーは続行され、プレーが途切れると終了となる(ペナルティを除く)
一般的に、勝っているチームはホーンが鳴るとボールをタッチラインの外に蹴り出して、プレーを終わらせる。
一方、負けているチームは、得点をとるため最後のアタックを仕掛ける。
日本vsアイルランド戦で検証
後半37分、アイルランドは12-19と「7点差」のビハインドだった。
7点は1トライ(5点)とトライ後のキック(2点)で同点に追いつくスコアだ。
この時、アイルランドはトライをとって同点にすべく、日本陣内でアタックを続けていた。
しかし、アイルランドの選手のパスを日本の福岡堅樹がインターセプトし、アイルランドゴール前へ。
アイルランドはチャンスが一転、日本に自陣ゴール前まで攻められピンチに陥った。
そして39分、日本はアイルランドゴール前のスクラムから攻めたものの、中島イシレリがボールを前に落とし、ボールはアイルランド選手の手に。
そして、40分になったことを知らせるホーンが鳴った。
アイルランドの選手は次のプレーで迷うことなくボールをタッチラインの外に蹴り出し試合終了に。
日本に大勝利が訪れた。
アイルランドは勝点「2点」を狙わず「1点」を確保
W杯は各プール5チームのうち勝点で上位の2チームが決勝トーナメントに進出する。
勝点の配分は、試合に勝つと「4点」、引分け「2点」となる。
その他にボーナスポイント(BP)として、勝敗に関わらず4トライ以上とると「1点」、7点差以内で敗けたチームにも「1点」が付与される。
試合終了まであと1プレーのみ、12-19と7点差で負けているアイルランドがとる選択肢は以下の2点。
- トライをとって引き分け(19-19)に持ち込み「勝点2」を狙う
- このまま試合を終わらせ、「勝点1」を確保する
アイルランドにとっては「1」のトライをとるのがベストだが、自陣ゴール前から1プレーで100mも攻めてトライを取るのは非常に難しい。
実際のところアイルランドは後半、日本のDFに抑え込まれ1点も奪えていなかった。
また攻めた場合、逆に日本にボールを奪われる(ターンオーバー)リスクも。
さらに、日本にトライやPGで加点されると、スコアが8点差以上となり勝点「1点」すら取りこぼしてしまう。
リスクを負い少ない可能性にかけて「勝点2」を取りにいくか、このまま「勝点1」で終わらせるか。
アイルランドが選択したのは後者だった。
プールAで上位2チームを争うのは、アイルランド、日本、スコットランドの3チーム。
決勝T進出は勝点1点の差となる可能性もある。
アイルランドが残りのロシア戦、サモア戦でBP含めそれぞれ勝点5点を獲得すると計16点となり、日本、スコットランドの結果に関係なく決勝T進出が確定する。
HCから指示があったのか、選手自らの判断だったのかは不明だが、決勝Tを見据えた冷静な判断だったと言えるだろう。