「ノーサイド・ゲーム」から学ぶ日本ラグビー改革

熊谷ラグビー場

「ノーサイド・ゲーム」から学ぶ日本ラグビー改革

6月13日に発売された池井戸潤の小説ノーサイド・ゲーム。

この本は「フィクションで実在の人物や団体などとは関係ありません」されている。

しかし、ラグビーファンであれば「どっかで聞いたことがある」内容ばかり。

ラグビー協会やトップリーグ関係者にとっては耳の痛いフレーズや文章のオンパレードだ。

実際に出てくる数字や制度もリアルなもので、現場への取材が徹底してなされたことがよくわかる。

物語はプラチナリーグ(トップリーグ)のGMに就任したサラリーマン君嶋隼人が、低迷したチームの再建を果たすべく奮闘する内容。

その中で対抗勢力として日本蹴球協会(日本ラグビー協会)の幹部と対立する場面も(書評はこちら

ここでは、君嶋をはじめとする登場人物が日本ラグビーの構造・問題点を考え、発言した一部をご紹介。

ラグビー界全体が旧態依然

ラグビーに興味・知識がなかった君嶋GMは、まずはチームの予算策定から着手。

調べるうちに数々の疑問点が浮かんだ君嶋に、チームのアナリスト佐倉多英が君嶋に日本蹴球協会の体質を説明。

日本蹴球協会が全く動かないんです。ラグビー界全体が旧態依然として改革を受け付けないどころか、企業にこれだけの負担をさせて何の還元もしないことを、むしろ当然だと思っているんですよ。

ラグビー界は矛盾だらけ

日本蹴球協会とプラチナリーグの歪な関係とリーグの運営・集客に努力しない姿勢に君嶋は矛盾と疑問を感じる。

日本のラグビー界は、自立できない大きな子供だ。考えてみると全て矛盾だらけ。強くなるためにプラチナリーグを創設したといいつつ、実際にはガラガラのスタンドを抱えたまま、参加企業のすねをかじってのうのうとしている。アマチュアリズムといいながら、プロ選手も交じっている。人気がないといいながら、何ら有効な手をうとうとしない。

日本蹴球協会は、売れないチケットを投げ売りし、あるいは企業に押し付け、せっかくスタジアムに足を運んでくれるのにファンのプロフィールを把握することもなく、集客にも無頓着だ。

運営しているのは、リーグ参加企業から受け入れている元ラグビー選手たちで、経営のプロではない。ラグビーという競技の崇高な理念に共感してカネを出してくれている大企業がなければとっくに崩壊、協会など跡形も無くなっているに違いなかった。

日本ラグビーは何もしてこなかった一世紀

(Bリーグは)営業収入が10億円を超えるクラブがB1の18クラブ中、6クラブもある。入場者数は全体で250万人。驚くのは、Bリーグの設立は2015年とまだ若いことだ。わずか数年でこれだけの実績をあげている。

日本蹴球協会の歴史は一世紀近くあるが、よく言えばアマチュアリズムを貫いた一世紀だ。何もしてこなかった一世紀ともいえる。

Bリーグとは雲泥の差

収入構造で一番違うのは、莫大な放映権料を含むスポンサー収入で、それだけでもBリーグは20億円を超える。物販だけでも10億円。

一方の日本蹴球協会をみると放映権料は4億円、物販にいたっては1,000万円程度しかない。雲泥の差がある。その差を生み出しているのは、経営者の差だ。

※Bリーグ2017-18シーズンの入場者数クラブ決算概要と日本ラグビー協会2018年の決算資料を確認したところ、↑に出てくる数字は全てリアルな数字。

協会を牛耳っている連中を変えなければラグビー界は絶対に変わらない

チームの新監督に就任した紫門(さいもん)が君嶋に対してこう述べる。

日本蹴球協会ってのは腐りきった組織でな、こいつらが動かない。協会を牛耳っている連中は、(改革の)そういう動きをことごとく潰してきた。ラグビー界は今のママでいいと思っている奴らだ。こいつらを変えない限り、ラグビー界は絶対に変わらない。

一番の被害者は、選手たちであり、ファン

君嶋はプラチナリーグの改革案を作成し、協会幹部に検討するよう頼んだものの、待てど連絡はこない。

痺れを切らし専務理事に電話したところ、君嶋案を検討することすらせず、一方的に電話を切られる。。

彼らが愛しているのはラグビーではなく、ラグビー界における自らの地位や権力なのではないか。だがここには、それを糾弾する社外取締役も株主もいない。これこそが日本ラグビー界の紛れもない現状なのだ。

一番の被害者は、選手たちであり、ファンである。いったい、日本蹴球協会にとってラグビーとは何なのだろうか。

ラグビーをしたいという子供たちがどれだけいる?

ラグビー部の新年度予算を承認してもらうため、君嶋は会社の取締役会で部の今後の方針を熱弁。

しかし、役員からはこのように反対される。

君らは行ったいどうしたいんだ。アマチュアリーグとしてなら、16億円ものカネはかけ過ぎだ。プロリーグにしたいというなら、惨憺たる観客動員を放置しているのはどういうわけだ。今、野球でもサッカーでもなく、ラグビーをしたいという子供たちがどれだけいる。

プラチナリーグが立ち上がってもう16年も経つのに、やることはその場限り、構造を変えられないまま、どんどんファン層が高齢化している。無為無策とはこのことだ。

ここまでは小説「ノーサイド・ゲーム」での話。

リアルな話として、以前ラグビー協会の特任理事を務めていた池田純氏(元横浜ベイスターズ社長)はスポーツ雑誌Numberでの対談の中で、以下のように述べている。

(ラグビー協会の)理事会に出ても僕と岩渕さんだけすごく若い。年配の人ばかりで「これ発言しても意味ないな」と思うことも正直あります(笑)。僕もどう進めればいいのか……本当に悩ましい組織ですね。

池田氏は秩父宮ラグビー場のボールパーク化を進めるなどしたが、協会幹部と対立して嫌気がさした?のかラグビー協会の特任理事を辞任している。

また、4月には森喜朗名誉会長が突然アポなしで理事会に出席、岡村正会長を批判する事態も発生(詳細

その結果、W杯前にも関わらず協会幹部が大きく入れ替わることが決定、まるで小説に出てくるような話が現実的に起きている。

近く日本ラグビー協会の新体制になるが、役職につく人の最初の仕事はこのノーサイド・ゲームを熟読することから始めるべきでは?

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2019年6月28日