「トップリーグ」「プロリーグ」両方やってみては?
「日本も国内プロリーグの創設を」と書いたので、ここでは具体的な案を考えてみた。
サッカーやバスケの成功例を目にしながら、なぜラグビーはプロ化に踏み切らなかったのかというと、黒字化が難しいため。
ラグビーは選手数が多く(=コストがかかる)、試合数が少ない(=収益機会が少ない)ため黒字化へのハードルが高い。
例えば、バスケBリーグ1チームの選手数は約13人、公式戦は年60試合。
ラグビーの社会人リーグ「トップリーグ」の場合、選手は約45人、公式戦は年15試合ほど。
人件費がかかる一方、チケットの売り上げの機会が少なく、メディアの露出や注目度からスポンサーや大きな放映権を獲得するのが難しい。
チームとリーグを持続的に発展させるためには財務の健全性が求められるが、それが難しいのがネックだ。
また、各企業はラグビー以外にも他のスポーツの部を保有しているケースも多く、ラグビー部だけにお金をかけて特別扱いするということも難しい。
トップリーグの現状
社会人ラグビー「トップリーグ」は16チーム、その傘下に2部に相当する「トップチャレンジリーグ」が8チーム存在する。
選手は、外国籍の選手は基本全員「プロ契約」、日本人選手は所属企業で仕事もする「社員選手」の方が多い。
チームによっては日本人選手はプロ契約を認めず全員社員選手としているチームも。
このように、トップリーグの選手はプロ・アマ混合という状況だ。
チームを運営している企業は大卒で入社するのが難しい人気企業がズラリと揃っている。
選手もラグビー推薦のような形で社員となり、引退後の仕事が保証される社員選手という待遇に魅力を感じている選手が多いようだ。
野球のように年棒が○億円という可能性があるなら別だが、ラグビーの場合、日本人プロ選手は500万円〜2,000万円程が相場。
アマ志向が強いというのも理解できる。
「アマ」と「プロ」の2つのリーグを運営する

プロを希望する選手と社員を選ぶ選手、資金力がある所とそうでない所、広報や情報発信・ファン獲得に熱心な会社がある一方、ほとんど何もしない会社もある。
そこで、各企業や選手の事情を考慮したのが、アマとプロの開催期間をずらして両方行うという以下の案。
- トップリーグ(e.g.8月→12月開催)
- 新プロリーグ(e.g.1月→5月開催)
そして、各チームは事情に応じて参戦方法を以下の3通りの中から選べばよい。
- トップリーグのみ参戦
- 新プロリーグのみ参戦
- 両リーグ参戦
例えば、パナソニックのように日本人もプロ選手がほとんどで、資金力もあるチームはトップリーグとプロリーグに両方参戦する。
この場合、堀江や稲垣のような代表の主力選手は、基本はプロリーグと代表の活動に専念、トップリーグの試合は調整を兼ねて出場するといった具合。
代表のテストマッチは7月と11月に開催されるので、代表での活動とプロリーグが重なることもない。
そして、トップリーグでプレーするのは日本人選手のみとする一方、プロリーグは外国人選手の出場を「無制限」とする。
プロリーグは国内と海外(香港)の計8チーム、H&Aで公式戦14試合、4チームによるプレーオフというイメージだ。
TLとプロ両方開催のメリット・デメリット
これによるメリットは以下の通り。
- ほぼ1年間を通じてラグビーが開催される
- TLはW杯時や11月ウインドウマンス時も開催
- 各企業の事情に応じて参戦するリーグを選べる
- プロリーグに新規参入する企業も?
- 人気・普及、メディアへの露出増
一方、デメリットは、
- 両方のリーグに参戦する企業の負担が大きくなる
- スタジアムの確保
- プロリーグがビジネスとして失敗するリスク
- トップリーグがプロの下部のようになる?リスク
といったことが考えられる。
ラグビーの場合、Bリーグのようにすぐに黒字化というのは難しく、コストの面で企業負担が多くなるのが最大の課題。
見習いたいアメリカのチャレンジ精神
アメリカでは「PRO Rugby」というプロリーグが2016年にスタート。
これはガバナンス等に問題があり1年で終了したが、これを引き継ぐような形で2018年に「Major League Rugby(MLR)」がスタートした。
MLRは大雪の厳しい天候の中でプレーしたり、野球場を借りて試合をしたり、観客も少なく運営やレベル面では発展途上。
しかし「取り敢えずやってみて、やりながら改善する」というのはいかにもアメリカらしい。
かつてアメリカは「サッカー不毛の地」とされたが、サッカーのプロリーグ「Major League Soccer(MLS)」の1試合あたりの観客動員はすでに2万人を超えている。
アメリカでは2027年(or31年)にラグビーW杯が開催されることが濃厚で、W杯を機にアメリカのラグビーはさらに強く発展するだろう。
日本も国内ラグビーの閉塞感を打破するには大きなチャレンジが必要。
プロ化に前向きなトップリーグの企業が複数でタッグを組んで進めれば実現に向けて可能性が出てきそうだ。
W杯日本大会は間違いなく盛り上がり、2015年大会時と同様に一時的なブームが訪れるだろう。
今度こそは、ブームを次の時代・世代に繋げる大胆な改革が必要だ。