【書評】負けない作法〜帝京大学ラグビー部岩出雅之監督〜

負けない作法

「負けない作法」帝京大学ラグビー部岩出雅之監督

書籍名 負けない作法
著者 岩出雅之、森吉弘
発売日 2015年3月31日 
出版社 集英社
ページ数 237ページ 
値段 1,200円(税抜) 

ラグビー大学選手権8連覇を達成し、大学一強時代を築いている帝京大学。この「8連覇」という数字は学生がちょうど2回転、さらに勝てば勝つほど相手のマークが厳しくなる中での記録で、まさに偉業といってもいい成績だ。

OBには堀江翔太、ツイヘンドリックなど日本代表やトップリーグで活躍する選手を多く輩出し日本ラグビー界への貢献度も高い。

チームを率いる岩出雅之監督は箱根駅伝3連覇を達成した青学の原晋監督と同様、大学スポーツ界では卓越した指導者として存在感を高めている。

そこで、ここまでチームを強くし勝ち続ける文化を浸透させた秘訣は何か?どのような理念・考え方で学生を指導しているのか?ということを探るべく本を手に取ってみた。

ラグビー部の監督が書いた本のため、てっきりラグビーの話が多く出てくるかと思ったら意外なことに、ラグビーにまつわる話は少なく、岩出監督の信念や哲学がビッシリつまっていて、お坊さんから説法を受けているかのような感覚に。

スポーツ関係者だけでなく、一人の人間として幸せになりたい、夢を成し遂げたいという人にオススメしたい一冊だ。

勝敗よりも大事なことがある

何よりも大切なのは、自分たちで目標を定めること、そして努力を積み上げてきたもの、加えて本来の実力をその時に出し切ることです。

体育会系の指導者は未だに鬼軍曹のような人が多く、一方的に指示を出し学生はそれに従って練習をする学校が多いのが現状。この場合、学生は受け身になってしまい自分で考えるということをしなくなってしまう。

しかし実際に試合でプレーするのは選手自身、ましてラグビーの場合、監督は試合中にピッチで直接指示を出すこともできない。指示待ちになってしまうと本番で力を発揮することは不可能だ。

帝京では時に練習を中断してでも選手同士で話をさせるそうだ。この本では、選手自身が自分で考え行動に移すことの大切さを何度も説いている。

私の最終目標は大学選手権に優勝するチームを育成することではありません。私が願うのは、卒業後、彼らが社会人として周囲の人から愛され、信頼され、幸せに生きていく力を身につけてほしい、ということです。

良い指導者とは、失敗や挫折をどのように「できる幸せ」へ結びつけられるのか、それを導くものだと思います。私は監督として、出会った選手には幸せをうまく感じることができるようなアプローチを常に心がけています。

強豪大学とはいえ卒業後にラグビーを続け、日本代表やプロ選手として活躍できるのはほんの一握り。

重要なのは4年間のラグビーを中心とした生活で心身を鍛え、人間的に成長し、いかにその後の人生に活かすことができるかということ。

そのために帝京では体育会的な上下関係を廃止し、寮で丁寧に規則正しく日常生活を送ることを徹底。

大学選手権◯連覇という数字はもちろん大事で大きな目標だが、勝つことありきではなくまずは人格形成、人間教育に力を入れ、その結果として強いチームが出来上がっているというのがよく分かる。

自分づくりの作法

「作法」とは、どんな状態であっても、そのことはとりあえず横に置いておいて、ともかくも行う決まり事のことです。自分の調子が良かろうが悪かろうが関係ない。必ずしなければならない儀式、と言い換えてもいいかもしれません。

ここからが本題となる負けないための作法の基本。

五郎丸のキック前のルーティンが以前話題になったが、ルーティンの日常生活版と言えるのかもしれない。その具体的な方法として、

1環境を整える
2身体のコンディションを整える
3マインドのコンディションと整える
4振り返りをすぐに行う。何度も行う
5丁寧に日常生活を送る

この5つの事を日常生活での習慣とし、意識せずともできるようになれば負けない作法を身につけるスタート地点に立つことができる。

負けない極意

「負けない極意」とは何か。それは、常に両極にある二つの軸を意識すること。そして、その二軸の真ん中に立つこと、です。

これだけ読むと?となってしまうが、つまり何か良いことが起こると人は気分が高揚し、逆に嫌な事があると落ち込んだりするものだが、一時的な感情に振り回されずに自分の心を整え、さらに力を最大限に出せるようにするということ。

このことを本書では「二軸思考」と呼んでいる。

試合に負けた時にその敗因を突き止めるだけでなく、勝った時もなぜ勝てたのかを考え次に繋げることが重要。

自分自身(または自チーム)に集中し、相手に左右されず(全ての原因は自分にある)、結果にとらわれずさらに高みを目指すことが負けないことにつながる。

誠実な人は、最終的に必ず力をつける

キーワードは誠実であること。誠実な人は、最終的に必ず力をつけます。誠実は、強いパワーとは違います。しかし、束になれる力です。束になったエネルギーは、大きな強さを発揮するでしょう。

最終的に行き着くところは人として大切な「誠実」であるということ。

自分づくりの作法を行い、寮や学校生活を通じた仲間への気配り、掃除や挨拶の徹底といったことが、人間的な成長をもたらし、結果としてチームが強くなる。

なにか理不尽なことがあってもそこで逆上せずに、冷静に誠実に対応しなければならない。特に団体スポーツにおいては自己中心的で独りよがりの選手がいると、チームに不協和音が生じ本来持っている力を発揮することはできない。

帝京の強さはラグビー部の監督というよりは、教員でもあり選手の親でもある岩出監督の信念と、その想いを受け止め人間的に少しずつ成長する選手達、そして選手の自信や誇りからくるもので、それは文化として浸透し学生が入れ替わっても途切れることのないものになっている。

ここでは伝えきれない言葉やポイントも多いので、興味のある方には「負けない作法」を是非おすすめしたい。

負けない作法「目次」

はじめに
作法0 常に行う「超基本」
作法1 自分を知り、自分をつくる
対談 現代の若者像とは?
作法2 『負けない」極意
作法3 「負けない」仲間づくり
対談2 リーダーシップとは?
作法4 長い人生で「負けない」ために
対談3 本物のキャリアとは?
おわりに

【書評】スポーツ事業マネジメントの基礎知識

2017.02.03