単独でスーパーラグビー参入、そして世界一を目指すパナソニックの野望と挑戦

パナソニック優勝

スーパーラグビー入りに向けたパナソニックの戦略と背景

トップリーグ3連覇を果たしてもなお、大学のトッププレーヤーや大物外国人選手を獲得し、強化を加速させているパナソニックワイルドナイツ。

2016年シーズンも選手層の厚さでは他の追随を許さず4連覇へ向けて視界も良好のようだ。

2016-2017のチームの目標はトップリーグ優勝、4連覇ということになるが、パナソニックの戦力補強などをみていると中期的にはスーパーラグビー入り、長期的にはスーパーラグビー制覇を目指しているように思う。

その思惑と背景を以下の通り予想してみた。

なぜパナソニックはスーパーラグビーを目指すのか?

パナソニックブランドの拡大のため

パナソニックは時価総額2.5兆円の総合家電大手で世界各国に進出、スポーツ関連のマーケティングにも積極的で東京オリンピックではスポンサー最高位にあたる「ワールドワイドオリンピックパートナー」としても契約している。

企業業績はリーマンショックや東日本大震災を乗り越えると、円安の追い風も受け堅調に推移、スーパーラグビーチームの運営費は年間で約10億円とされるが、仮に10億の赤字が発生したとしても広告宣伝費として捉えると決して高い金額ではないだろう。

世界で「Let’s note」や「VIERA」を売るためには、まずPanasonicを知ってもらうことが重要。胸に「Panasonic」と書かれたユニフォームを着た選手が活躍すると広告費としてある程度ペイできる。

特に人口が多く経済成長が著しい南アフリカや、ラグビー人気が高く経済規模の大きいヨーロッパでは宣伝効果が見込めるだろう。

日本、世界でのラグビー人気拡大を見越して

日本では2015年W杯とリオ五輪での代表の活躍を受け、かつてないほどラグビー人気が高まっており、2019年に日本開催となるW杯、そして2020年の東京オリンピックに向け、ラグビーの注目度がさらに高くなることは間違いない。

なお、ラグビーW杯はオリンピック、サッカーW杯に次ぐ世界3番目のビックイベントで40億人がテレビで観戦するという。

さらに、アメリカでもプロのラグビーリーグが2016年からスタート、ここ数年でラグビーの競技人口も急増している。

ラグビーは将来の見通しが明るい魅力的なスポーツであり、その中で最もレベルの高いリーグであるスーパーラグビーのチームを保有することで、パナソニックブランドを高めるができる。

熊谷ラグビー場をパナソニックの本拠地へ

埼玉県北部の深谷市や熊谷市などは中学校でラグビー部があるところも多く、ラグビーが盛んな土地柄。

その拠点ともいえる熊谷ラグビー場は2019年W杯の試合会場になることが決まっており、すでに改修工事がスタート、2018年には2万4,000席のラグビー専用スタジアムに生まれ変わる。

問題はW杯後の活用方法。スタジアムの維持費もかかることから、集客の見込める試合を招致する必要がある。

そこで、熊谷ラグビー場をパナソニックのホームとし、スーパーラグビーの試合を開催することで、熊谷ラグビー場を活かすことができる。

パナソニックは群馬県太田市を本拠地としているチームだが、熊谷市とは利根川を挟んで隣同士。

パナソニックもこれまでトップリーグの試合を熊谷ラグビー場で開催しており、試合当日は熊谷ラグビー場周辺には熊谷ナンバーや大宮ナンバーだけでなく、群馬ナンバーの車が目立ち、渋滞で車がなかなか動かいほど混雑する。

パナソニックのホームである太田市陸上競技場は古くて陸上のトラックもありラグビー観戦には適しているとはいえない。

熊谷ラグビー場に、ブランビーズやクルセイダーズが来てパナソニックと対戦するとなれば、地元の熱心なファンをはじめ1万人の集客は見込めだろう。

パナソニックのスーパーラグビー参入に向けて

内田啓介

大卒の有力選手を多数獲得

2016年4月にパナソニックに入団した選手を見ると有力大学生を多く獲得、近い将来のSR入りを思わせる力の入れようだ。

2015年W杯日本代表の福岡堅樹(筑波)と藤田慶和(早稲田)、学生ながらサンウルブズ入りした平野翔平(東海)、大学選手権7連覇を達成した帝京から坂手淳史主将、森谷圭介と学生のスター選手が新たに加わった。

さらに異例のことながら現役の筑波大4年生、山沢拓也の入団も発表している。

おそらく、パナソニックがスーパラグビー入りのターゲットとしているのは、ラグビーW杯日本大会後の2020年頃。つまり、その時の主力となるであろう選手を多く獲得したということだ。

同時に2016-17シーズンを勝ち抜くための即戦力である外国人選手(バックマン、ナイヤラボロ、ポーコック)も獲得しており、今シーズンと数年先のチーム作りを同時進行で進めている。

ロビー・ディーンズの長期政権へ

ロビー・ディーンズHCはこれまでクルセイダーズ(NZ)のHCとしてスーパラグビー優勝5回、NZの最優秀コーチ賞を受賞し、さらにオーストラリア代表のHCも務めるなど世界的な名将として知られる。パナソニックでは2014年から指揮を執っている。

日本代表前監督エディー・ジョーンズが退任した後、日本ラグビー協会はロビー・ディーンズを後任とすべく交渉を行ったが、ディーンズはこれを拒否したことが明らかになっている。

普通に考えると、パナソニックのHCよりも2019年の自国でのW杯を控えた日本代表のHCとしての職の方が注目度が高く、やり甲斐があるように思うが、パナソニックの世界一を目指した取り組みの方がロビー・ディーンズには魅力的に思えたのではないか。

来年2月に「Brisbane Global Tens」に参加

パナソニックは来年2月にオーストラリアのブリスベンで開催される「Brisbane Global Tens」に参加することが決まっている。

これは10人制のラグビー大会で、参加するチームはNZと豪のスーパラグビー10チームの他、ブルズ(南ア)、トゥーロン(仏)、サモア代表で、2日間にわたって開催される。(詳細はこちら

パナソニックの参加にあたってはロビー・ディーンズが尽力したようで、10人制とはいえ世界の強豪チームと力関係を測るには絶好の機会となる。

サンウルブズがスーパーラグビーに参戦して分かった問題点

2016年にスーパーラグビーに参戦したサンウルブズは1勝1分13敗で初年度を終えた。結果は最下位となったが、準備期間が短く、不慣れなことが多かった中で強豪相手に善戦した試合も多く、よくやったと評価する声が多い。

しかし課題も多く、チーム専用のクラブハウスやグラウンド、トレーニング施設がなく、HCや選手との契約も遅れ一時は参戦すら危ぶまれたほど。チームの運営資金はスポンサーに頼っており、資金面での不安も続く。

パナソニックであれば、これらの問題が生じることはなく、中長期的にチームの方針を策定してどっしりと強化できるはずだ。

トップリーグは2軍、スーパーラグビーは1軍で

トップリーグは8月下旬から1月中旬、スーパーラグビーは2月下旬から8月上旬まで開催される。

パナソニックがスーパーラグビーに参戦した場合、ほぼ1年中試合が行われることになるが、例えば選手を1軍から3軍に分けて戦うことでチームとしてシーズンを戦い抜くことができる。

トップリーグ序盤戦は2軍、3軍が主力として戦い、終盤になるにつれスーパーラグビーを見据えた選手の調整の場として1軍選手も試合に出場するという具合だ。

スーパラグビーのチームとして、トップリーグにおいても優勝争いをできるレベルを保つ必要があり、スーパーラグビーで戦うためには、トップレベルの外国人選手の補強もさらに必要になる。

日本のラグビー界はパナソニックが先導役に

これまで日本のラグビー界は歴史が古い大学ラグビーが牽引してきたが、2011年のエディー・ジョーンズHCの就任以降、2015年W杯での代表の活躍、2016年のスーパーラグビー参戦とここ数年で大きな変化が起こっている。

そしてトップリーグを超えて世界を目指すパナソニックが日本ラグビーを牽引するチームとして存在感を高めている。いよいよトップリーグが開幕するが、パナソニックのより高みを目指した戦いにも注目し応援していきたい。