【書評】ハードワーク〜勝つためのマインド・セッティング〜

エディー・ジョーンズ

ハードワーク:ラグビー元日本代表HCエディー・ジョーンズ

書籍名 ハードワーク
著者 エディー・ジョーンズ 
発売日 2016年12月2日 
出版社 講談社
ページ数 203ページ 
値段 1,400円(税抜) 

ラグビー元日本代表のヘッドコーチで現在はイングランド代表ヘッドコーチを務めるエディー・ジョーンズが記した、成功するための心構え(マインド・セット)やリーダー論が詰まった一冊。

東海大学、サントリー、日本代表で指導経験があり、日本人の強みや弱みやマインドをよく理解しているエディーだからこそ書ける日本人向けの内容となっている。

主要な読者をビジネスマンとして書いたように見受けられるが、書いている事はシンプルで難しい日本語やビジネス用語が使われていることはなく、ビジネスマンだけでなく中高生でも理解できる内容となっている。

ページ数は約200ページだが1ページあたりの文字数は少なく、読むのが早い人であれば1時間程度で読める分量。

ラグビーのオーストラリア代表HCとしてW杯準優勝、日本代表HC時代にはW杯で3勝を挙げ、イングランド代表HCを務めている2016年はテストマッチで13勝無敗と、指導者として飛ぶ鳥を落とす勢いのエディー・ジョーンズ。

そのエディーがこれまで率いてきたチームをどうやって成功に導いてきたか、その方法・考え方が知りたい人にオススメの一冊。

ハードワーク

まずはマイナス思考を捨てる

「自分はどうせダメだ」というマイナス思考が、成功を阻んでいるのです。それを取り除きさえすれば、誰でも成功を手に入れることができます。

エディーが日本代表のHCに就任した当初、「世界のTOP10に入る」というエディーに選手達は「自分達は小さくて弱いため強豪には勝てない」という弱気な反応を示したという。

そこでエディーはこうした思い込みを取り除きながら、弱みを強みに転換し、日本人らしさを活かしたラグビースタイル「ジャパン・ウェイ」を構築することに。

エディーは読書家というだけに、この「マイナス思考を捨てる」といったよく欧米の自己啓発本に出てくる内容と重なる点が多いのが、この本の特徴。

眠っている選手を侍に

1995年、私が初めて日本に来た時、人々に強い個性がなく、みんな他人から自分がどう見えるかということばかり考えているように見えました。自己主張を極力控え、「普通」であることに心を砕き、半ば眠っているように見えたのです。

大学時代同じようなことをアメリカからの留学生から聞いたことがあり、個人的に(日本人として)ドキッとした一文。

日本は平和で秩序が保たれている一方、個人よりも組織の一員であることを優先する。長時間労働と生産性の悪さは、この日本人の性質からきているものだろう。

なお、エディーは「眠っている選手達」を勇敢な「侍」へと変貌させるべく、日本人の特性を把握するため武士道までリサーチさせたというから凄い。

その結果、日本人の古来から持っている強みとして「信頼」「忠誠心」「努力」の3つのキーワードが導かれ、「ジャパン・ウェイ」に繋がったという。

なによりも準備が大事

私はどんな事でも、成功は、準備がすべてだと思います。どんな事でも、成功とは、相手に勝つことほかなりません。勝ちたいなら、相手を上回る準備をするしかないのです。

本書には書かれていないが、エディージャパンが南アフリカを倒した一番の要因はこの「準備力」にあるだろう。

南ア戦の主審をW杯前に日本に招聘してその笛の吹き方の特徴をつかみ、選手は本番半年前にイングランドに足を運びスタジアムや宿泊先を視察、南アのテストマッチは専門スタッフが徹底分析して相手を裸にしてその分析を踏まえた練習を行なった。こうした準備が南ア戦の金星に繋がることに。

エディーは「準備は自信を持つために行うもの。成功は十分な準備がもたらす自信が呼び込む」とも語り、この本では「準備の重要性」について何度も言及、いかに準備が大切かを説いている。

スポーツよりも勉強を

日本のスポーツ界について、大きな疑問を感じるのは、スポーツをする人が、勉強をしないことです。なぜ、このような傾向が風土として根付いてしまっているのか、私は理解に苦しみます。(中略)今の日本におけるスポーツの地位、特に学校の部活動のやり方は、明らかに間違っています。

日本のスポーツ、特に学生スポーツのあり方に一石を投じた箇所。日本においては部活動=楽しくなく苦しい練習で耐えるものというのが一般的。

さらに学生生活が部活動一辺倒になってしまい、中学・高校時代の思い出といえば部活動しか思い浮かばない人も多いだろう。

これは日本の学校や部活動のシステムにおける構造的な問題で、欧米の学生が複数のスポーツを楽しんで行うのとは対象的。国が主導し、学生には強制的に週に2日は休ませるなど荒療治をするしか解決策はないのではないか。

さらにエディーは日本のラグビー選手はすべき10代の時に勉強しないでラグビーばかり、そしてトレーニングが必要な社会人になると、仕事があるためあまり練習をしないと苦言も。

五郎丸歩は活躍できる?

五郎丸に活躍してほしいという、日本の皆さんの気持ちはよくわかります。しかし、残念ながら難しいと言わざるをえません。実際、彼の海外での成績は悲惨です。なぜ、そうなってしまったのでしょう?彼は自分をスーパースターと思い込み、努力を怠ったからです。

エディー節炸裂の文章。同じようにサッカー日本代表の本田圭佑についても、パッとしないのは努力を怠った結果とばっさり。

これには全く同意できない。五郎丸は名声と富を得ても浮つくような人間ではないだろうし、所属チームで出場機会に恵まれないのは単にポジション争いで二番手、三番手の選手であるという理由だけ。

出場機会を得るのが難しいと思っても強豪チームにいる理由としては、たとえ試合に出れなくとも得られるものが多いと判断したからだろう。

五郎丸は現在30歳、残り短いラグビー選手としての現役生活を海外の強豪で送ることにより、お金では得難い経験をすることもできる。

ハードワーク「目次」

(序章)マイナス思考を捨てれば、誰でも成功できる
1章 日本人独自のやり方で勝つ
2章 どう戦略を立てるか
3章 何が勝敗を分けるか
4章 成功は準備がすべて
(終章) 部下がリーダーを超える時

エディーはW杯南ア戦で「ショットで3点を取れ(同点にしろ)」と指示したにも関わらず、選手がスクラムを選択し逆転勝利を勝ち取ったことについて「部下がリーダーを超えた」とし、成功はあと時のトライのように皆さんのすぐ目の前にあると結んでいる。

成功するために「エディー・ウェイ」を学びたい人にはオススメの一冊だ。

【書評】ラグビーをひもとく〜反則でも笛を吹かない理由〜

2016.12.21